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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-09-

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 ちなみに綺麗に貫通したので、マンガの老兵のように不発弾を腹に抱えて歩いているわけではない。
 果たして彼はTシャツを下ろさせた。
「女ってひ弱なだけかと思ったぜ。おい兄弟、銃を下ろせ。この女は戦士だ」
 おいおい。すると背後から、
「しかもサムライだ」
 おいおいおっさん。
「お前は黙れ異教徒」
 調子づいて補足した青い目の小児科医は、カラシニコフ3挺を向けられてホールドアップ。
「お前に免じて近づくことを許す。その窪みを踏むな」
「ありがたいこって」
「だからてめぇは黙れ。必要なこと以外喋るんじゃねぇ。これ以上言わねえぞ」
 軽口の小児科医は即座に何か返そうとしたようだが、さすがに今度こそ黙ってやり過ごした。
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 入村の儀式として掟の読み上げを聞かされる。要約すると、許可されたこと以外の勝手な行動は処刑対象。族長の姿を見るな。ケシ畑について口外するな。洞窟住居は彼女以外入ってはならぬ。……処刑は勿論、即座に死刑。である。
「質問いいか。オレが入らないでどうやって診察治療するんだい」
「この娘には見せる。娘の見立てをオレが伝令する。それでてめぇが判断しろ。薬とか必要なモノは運んでやる」
 それは事実上彼女が〝診断〟するに等しい。
 同じ事を医師も思った、とその困った顔は示していた。
「そんな無茶……」
「黙れ。だから女医者と言ったじゃねえか。聞かずにこいつを寄越したのはお前らだ。だったら文句を言うな」
 銃口が医師の口に突き刺さらんばかり。
「まぁ、出来る範囲のことをしましょう」
 彼女は言った。その時はその時だ。
「判った、オーケイ」
 銃口が下げられ、命令その1。他の子どもが罹患してないか診察しろ。
 医師は文句言いたげだったが、口に出す寸前でため息にすり替えた。言いたいことは判る。普通は病気の子をまず診て、その結果に基づいて、同じ病気の可能性がないかを確認する。順序が逆。
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(つづく)

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