【理絵子の夜話】犬神の郷-41-
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ああ、と理絵子は声に出したくなった。思えば自分の霊的冒険には都度、杖なり剣なり味方に付けて乗り切ってきたように思う。それが今もまた、であろう。ただ、これは過去のいずれとも異なる凄まじい代物と言える。その聖戦女は北欧神話系の出自、一方錫杖は密教系だ。相乗りした、ということになるからだ。高天原に宗教戦争はあるまいが、共同で人間如きに助力いただけるとは。
その意味するところは“天からの信頼”以外の何物でもあるまい。
確信。自分は自分の見識と価値観に従い、この剣を振るえ。
応じたある種の権利と共に。
理絵子はその“剣”を手に、中空で固まっているキュクロプスに目を向けた。
〈どうするの?〉
肉体的攻撃不可能。対し、精神的攻撃を抑えるには、永遠に封じるか完全に消滅させるか。
魔性の物であれば、こちら側、言うなれば闇から光へ出てくる手段・乗り物として肉体を用いる場合もある。ある種隠れ蓑、光除けとして。
〈驚かないでね〉
理絵子が言う番であった。
「屠りなさい!」
犬たちに命ずる。
それは登与にはデジャヴであり、美砂には驚愕であった。ちなみに、その聖戦女の助言を得て、悪霊と化した古代戦士から除霊する際に使った手段が、聖戦女に連れ添う狼に食わせるという行為だった。曰く北欧神話では、兵の屍を狼が食うのは神の元へ返す儀式を意味するとか。
果たして力場から切り離されたキュクロプスがどさりと落下し、犬たちが食ってかかる。
〈これは……〉
〈霊的な存在を消去する手段は恐らく2つ。正と負とが衝突してプラスマイナスゼロになること。権利者が消してしまうこと〉
〈権利者……生殺与奪……神様ってこと?でもまさか〉
美砂の驚愕に理絵子は解を示した。
〈犬神〉
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(つづく)
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