【理絵子の夜話】犬神の郷-43-
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さておき、まずは彼らの駆使する念動力に対処する。送りつけられる意志は単純かつ明快。組み伏せて陵辱する。子孫を残せ。
美砂はひたすら生殖器を狙った。欲望剥き出しの有様に対して刃物で切るような力を駆使する。ほぼ一撃で全員の生殖器を切ったが……登与の看破通り再度ニョキニョキ生えてきた。愛情無き陽物は往々にしてある種のおどろおどろしさを伴うが、それが切っても切っても再生する様は狂気すら感じさせる。実際その有様は常人が見たなら、同年代の普通の女の子ならば発狂しても不思議ではあるまい。
美砂が手間取るその間に、他の者どもは彼女らを包囲し一散に襲いかかるという組織行動を見せた。しかしこれには理絵子が対処した。長刀よろしく錫杖を振り回し追い散らす。結果、それぞれしたたか岩や壁面に激突するが、肉体・精神のダメージは大きくはない。いや、出血はしているし、手や足の明確な折損、内部組織の脱出も見られるが、それを痛いとか異常とか思う神経が無いのだ。稀な病気の一つに痛みを全く感じないというのがあるが、それと同様であろう。
〈効くかどうか判らないけど……〉
登与は姓が高千穂ということもあり、名前だけ見れば神道の巫女を思わせるが、彼女は能力の故に西洋の魔法に興味を持ち、応じて十字架を手にした。
太陽系を形成する星々の精霊に力を借りる。ルーンで綴られた秘密の暗号。
「(アポロンよアポロンよ。天に座したる太陽王、灼熱と浄化の権限を今こそ我が手に)」
途端、地下洞窟都市が燃え上がるように明るくなった。まるで太陽が小型化して登与の手に宿ったようであった。それは一見、オカルト雑誌の遊び心の呪文が本当のドライブ能力を有したかのようであったが、実際は登与自身の真摯な気持ちが天へ通じたと見て良いと思われる。
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(つづく)
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