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2012年10月 6日 (土)

【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-10-

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 不服抑えて命令を承知すると、年季の入った木製の椅子と机が出てきて座らされ、洞窟都市に声が飛び、子ども達が走り出てきた。
 彼らの服装はハッキリ言ってボロ布をまとったような。
 乾燥地だから目立たないだけで、衛生状態は良くない。生活排水であろうか、土中都市からチョロチョロ出てくる水は汚泥混じりに思われ、実際、少々臭う。
 ただ、幼子たちは元気であり、その目の輝きは天真爛漫。にっこり笑って銃撃つ真似事「異教徒をぶっ殺すんだ」ダダダダダ……多分。
 ともあれ、彼女がしゃがんで腕を広げたら、あっという間に囲まれた。
 みんな同じ言葉を口にしながら、青いカーディガン引っ張ったり頬ずりしたり。その言葉は殺す、とも、異教徒、とも、異なる発音。
「天使の服、なんだよ」
 そもそも青い服は珍しいらしい。あっても目立つから着ない上、この地の服地は基本、麻。仮に染めるにしても、古来〝青い染料〟を天然の産物から調達するのは至難の業。宝石であるラピスラズリを砕く程度しか手は無く、結果、神権の象徴や、王家貴族のステータスシンボル。
 数多キラキラの瞳に囲まれ、彼らをカモの子のように引き連れ、診察の準備。机は本来この子達のための私設学校で使う教卓だという。そこに測定器をドッカと載せ、バッテリで起動すると、子ども達がワッと集まって電子画面のスタートアップを覗き込む。その手に手におやつを配り、男達にも手渡す。
 せんべい。
「なんだこりゃ。米帝のウンコか?」
 日本のお菓子で原料がコメだと説明したらやはり顔色が変わった。
 子ども達を並ばせ、順次診る。そもそも走ってきた位なので、やや身体は小さい気はするが、少なくとも病気ではない。むしろ伝令の彼同様、体脂肪率の低い引き締まった体つきだ。流行り病と聞いて想定したのはコレラや赤痢だが、この様子ならそれは無いと断言できる。ただ、みんな小さな擦り傷をあちこち作り、前述の衛生状態であるため、破傷風の予防注射。痛そうだが泣き顔を見せないのは〝神に庇護された子〟の自負だろうか。
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(つづく)

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