【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-11-
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想定外の予防注射で破傷風は残り一本。ただまぁ、みんなオーケイだから良かろう。
そろそろ本題に入りたい。
「それで?流行り病と聞きましたが?」
ウソ付いて自分たちを呼びつけ、例えば人間ドックのような検査を首領や支配者に施せ、という集団もある。その類例を疑ったが、病気の子がいるのは本当で、その伝染の可能性から隔離しているという。ちなみに、この子達を先に診断させたのは、その子の病気が医師や看護婦を経由し、元気な子へ伝染したら困るから、だそうだ。
「お前たちが死んでもどうでもいいが、戦士となるべき授かり物のこいつらが死ぬのは困る。案内するからついて来い。女、お前だけだ」
彼女が準備する間、医師は銃口を向けられホールドアップ。彼女は応急処置に必要な用具一式だけリュックに背負い、その医師を机に残して立った。なお、超音波は重いので必要があれば追って持ち込むことにし、後回し。
少年はその間に洞窟まで往復した。戻った手には火のついた松明。
「来い」
炎を掲げ、洞窟都市の奥深くへ案内される。足もとの汚水と、時折感じる天井からの雫が気になる。なお、汚水の捨て場を外部に設けないのは、発酵して熱を持つと無人探査機に察知されるから。及び、侵入者があった場合に内部の堰を切り、侵入者めがけて〝鉄砲水〟とするため。
排泄物を武器にするのはローマ軍などに見られると彼女はどこかで読んだ気がした。
と、思考を遮るうめき声。そして、リズムと音階を持った祈りの声。
うめき声は子ども、しかも乳児であり、祈っているのは父親。と判じる。
赤ちゃんが〝泣く〟のではなく、うめくというのは尋常ではない。
ひどい臭い。
近づく前に様子を見たい。思わず立ち止まると、少年が引き金に手をして俊敏に振り返った
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(つづく)
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