« 【理絵子の夜話】犬神の郷-48- | トップページ | 【理絵子の夜話】犬神の郷-49- »

【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-13-

←前へ次へ→
.
「何でキャンプにもっと早く……」
「神が家族をお試しになっているんだと思って」
 死ななければ神の庇護下。
 敬虔なのは不信心より結構なのだろうが、非論理的なのは弊害と言うしかない。
 反射的に怒鳴りつけたくなる。しかし、音や光の刺激が破傷風には良くないことに気が付いて、
 代替として取った行動は。
 平手打ち。
 しかも頬骨のあたり。鈍い音がしたので〝ほっぺにビンタ〟よりも痛かったと思われる。
 実際彼は濡れた通路に尻餅をつくことになった。存外に力が出て張り倒してしまったのか、柔弱なはずの女の子にひっぱたかれて腰を抜かしたのかは判らぬ。
 あまりの出来事に、きょとんと固まってしまった彼に対して。
 父親の方が動いた。腰のナイフを抜いて構え、低い声で脅迫調。だが次の行動に移ろうとはしない。どうやら警告と言うことらしい。次は躊躇しないぞ。
 その、構えたナイフ。
 血痕がある。彼女は見て取った。
 それが、疑問の答えと認識した。
「殴ったのは申し訳ない。でも君が命を粗末にし過ぎるからだ。神様が試したんじゃない、不潔にしている人間が原因だ。病気を広めたのはこのナイフ」
 説明すると瞠目した。
 父親への通訳を頼んで以下の確認。
「そのナイフで、この子の臍の緒を切りましたか?」
 答え、イエス。同じ症状の弟妹も然り。
「そのナイフは他にどんなことに使っていますか」
 万能ナイフだという。ここは良くネズミが出るから投げて刺し殺す。
 果たして、父親が指さした足下、汚泥の中にネズミの死体。
 間違いなかった。ことごとく不潔なナイフを使うから、ことごとく感染するのだ。破傷風菌はこの刃に常在しているのだろう。
 ちなみに不衛生な新生児対処で破傷風というパターンは途上国での典型例と言える。へその緒を切るというのが宗教的儀式化しているゆえに、最も不潔に弱い状態で不潔が繰り返される。

(つづく)

|

« 【理絵子の夜話】犬神の郷-48- | トップページ | 【理絵子の夜話】犬神の郷-49- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-13-:

« 【理絵子の夜話】犬神の郷-48- | トップページ | 【理絵子の夜話】犬神の郷-49- »