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【理絵子の夜話】犬神の郷-46-

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 端的にはビニール人形に人の皮膚を貼ったようなものと言うか。
 都度地下集落内の乾燥皮膚を念動で寄せ集め、霊の身にまとって“肉体”を偽装していたのだ。言ってみれば本物の人間のパーツを使った人形・ゾンビである。
 それが、今、登与の放った炎によって片っ端から燃えて失われて行く。
「そんなことをしたって、眠りに落ちる心地よさや、満腹の悦楽、性の歓びは得られないよ」
 美砂が、言った。
 看破であった。
 同情、が、彼女達の心理にあった。
 鬼達はそのことに気付き、動揺し、そして敵対心を喪失した。
 動揺……彼らは過去、恐怖と攻撃、それ以外の感想を持たれたことが無かった。同情されることに戸惑いを見ていた。
 攻撃されない、彼女達は確信して地上へ降りた。
 “一族”は言わば多重人格のような様相を呈してそこにあった。
 根本・基本となる人格があり、地下茎のように分身的人格と繋がっている。分身的人格は明確な人格を成しているものもあれば、発展途上で各個独立していないものもある。この発展途上が乾燥皮膚を纏うと子どもに見える。
 オカルトに言う浮遊霊、動物霊と言われるものの多くは、強い気持ちの断片である。怨念だけ、悲しみだけ、等、強い気持ちの塊がいつしか人格的特徴を備えたものだ。動物と言われるのはそれ未満の存在である。似たような形で、ここでは各個が繋がっている。
 忌み嫌われた人格の集まるところ。
 そうした人格が寄り添い、怒りのままに人を殺し、喰らい、暴虐と陵辱を。否、のみならず。
〈恋が、したかった〉
 根幹となる人格が言った。“父鬼”と呼ばれているらしい。
 元は異形の外見を生まれ持った、いや、肉体的異変に伴い超能力を備えたミュータント。オカルト的な書き方をすればそうなる。が、古代日本においてはただの化け物。
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(つづく)

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