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【理絵子の夜話】犬神の郷-49-

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 先ほど絶命した犬たちが霊的存在としてそこにあった。彼らからのテレパシーによるメッセージであった。
 確信がある。彼らは死して文字通り犬神に昇華した。
〈我らは、この者達を抑えよ、あわよくば殲滅すべしと任ぜられたが、こうして肉の身を出でてその方策を見つけたり。死こそ必要であったが真(まとこ)なり。故に問う、この者達を然るべき地へ、あるべき時空へと誘う。それを我らに任されて良いか〉
 古風な言葉だが、彼らは鬼達を抑制し、更には滅ぼすことを任務として、この地に遣わされたようである。が、今の今まで滅ぼすことは適わず、ようやくそのために“死ぬこと”が必要だったと気付いた。そして、解決法は理絵子の思いつきの通り。
「然り。頼んで構わぬか」
 左後方、控え待つ犬神に向かい、理絵子は振り返って確認した。その髪が翻り光り輝く。
〈御意〉
「屠れ犬神」
 大権を得て、理絵子は再度命じた。
 犬神、それは犬の形をした炎であった。
 鬼の一族は生じる事態を悟ったようであるが、その時既に動くことは出来ないのであった。
 炎の犬は屠った。一族の悉くに噛みつき、悉くが炎に包まれた。
 それは、彼ら鬼族もまた、死ぬ必要があったのだと彼女達は解した。
 死んだと認識する必要があったのだ。
 死ぬことにより肉体属性に対する欲望や憧れは全て無くなる。還元に身を預ける事への安らぎを見出す。
 炎の犬が駆け回り、鬼達の発散していたエネルギ、形成していた力の場が揺らいだ。
〈大地が弾けるぞ〉
 警告であった。
 大きな地震が生じる。
 美砂が呼応した。彼女達は宙へと逃れ、程なく、マグニチュード7を越す直下型地震が一帯を襲った。
 大地が寒いかのように震え、轟く。そして、積もった雪はもちろん、雪からの水分であろう、滑りやすくなっていた山肌すらも剥がれて崩れ落ちた。“垢すり”の垢のように、斜面の森ごと地滑り崩壊。似たようなことが濃尾地震で起きたと理絵子は読んだことがある。
 雪煙と土煙。視界奪われる前に高度を取る。
 集落に四方の山から雪崩が襲う様が見える。
 集落!
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(つづく)

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