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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-14-

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「呪われているのはそのナイフだ」
 彼がそう通訳したせいで、父親が激怒した。
 何事か怒鳴り、その怒声に幼子が驚いたようでびくりと震え、その小さな身体にあるまじき勢いで暴れ出す。
 破傷風は神経に影響を与え、その結果として筋肉がひどく突っ張り、前述の身体の反りや、強く歯を噛んだりといった様態を呈すわけだが、他に、僅かな刺激で爆発的な筋肉運動が惹起される現象も現れる。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、振動……ささいなことで七転八倒し、その際例えば、自分の筋力で背骨を折る、舌を噛むなどして死に至るのだ。人間は五感から刺激を受けると応じて何らかの反射を示す。破傷風は通常なら言わば〝ぴくり〟で済むようなその反射が一気に全身発作になり、自身の命に関わる。
 父親は押さえつけようというのだろう、幼子の身体に覆い被さると、予告通りに彼女にナイフを投げつけた。
 しかし次の刹那、彼女は左手の人差し指と中指の間にそのナイフを挟んで取った。
 車中で見せた技と基本的には同じである。応じて父親は度肝抜かれたようにそれ以上の動作を止めた。
 そして、そのストップモーションが効いたらしい。幼子の発作も治まった(押さえつける行為自体、幼子には激甚な刺激)。
 ただ、車中に比して失敗が一つ。
 彼女の指の間から手の甲へと血が流れ出す。指の間の水かき状の部分に刃が触れて切れた。
 破傷風菌の付着したナイフの刃が。
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「う……」
 勿論こんな活動しているのでワクチンを受けては来ている。
 怖くはない。
 10年と言われるその効力が正しければ。
「お前……」
 流れる血筋に彼が腰を浮かせる。一方、妹の様子も気になり。
 ただ、その状況を彼女は好都合と受け止めた。
「呪いは私の身体が引き受けた。このナイフと引き換えに病気を治す」
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(つづく)

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