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【理絵子の夜話】犬神の郷-51-

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 まず、組長らが逃げたのは、鬼族に巫女を送り込んだ裏の目的が露見し、仕返しされると思い込んだから。すなわち鬼族に唯々諾々従っていたのではなく、巫女の能力による鬼族の殲滅を目していた。
 そして、それを指南したのは佐伯さん。
 何故なら、佐伯さんは。
「元禄地震、宝永地震と、大きな地震が続いた。その度に生け贄が出されてね。最初は怒りと苦しみばかり。でも見た通り鬼どもはそれすらも追いやる力がある。諦める者もいたさ。だけどそれじゃだめだろ?みんな虜囚になっちまう。そこでいつの頃からか、このままじゃいけないと。いつかきっと全て取りなす覚者が来ると。それまで代々申し送りをしようと」
 つまり、いつか現れるであろう、最終解決能力者にたどり着くまで、生け贄となった巫女が、次の生け贄となる巫女へ、霊的に、申し送りをしてきた。
 佐伯さんは、そうして、受け継いできた巫女の一人。
 逆に言うと、犠牲になった巫女達は、それなりに使命を持って次代へ伝えることが出来たがために、この世にとどまる必要も、怨嗟を持ち流離う必要も無かった。
「そしてあなた方が解決した。死を認めることが解決とはね。それは地の理だわね。ここで地震が多かったのは、地の理を解さないことに大地がお怒りだったのかも」
「天ばかりを求めるのは間違いである」
 理絵子はそう理解して口にした。
「その通り。地で生きているならまず地に従え。地をこそ知れ。そこすっ飛ばして天を語るな愚か者が。あなた方の周りにもおるでしょう?自分のことできないくせに人のことばかり気にするのが。人の業(ごう)なのかも知れませんね……さぁ、時が来ました。お行きなさい。あなた方によって全ては果たされた。私はあなた方をお返しする」
「佐伯さんは」
「私はこれから、私まで伝わってきた巫女達に、解決したことを教えに行くから。それに、この有様であんた達だけ残ると後々面倒。余計な疑いが掛かるよ」
「でも……」
.
(次回・最終回)

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