真っ赤な電車の秘密の仕事-1-
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「どうやってもムリなんだよ」
ユースケはインターネットで検索した地図の印刷を指さしながら言った。
最寄駅「はじめのせと」(新瀬戸)は地元電車「はじでん」の終点。「新」の字をはじめと読む。で、新電鉄からはじでん、なんだけれど、貧乏会社で走ってる電車は東京の私鉄のお古、しかもどいつもこいつも真っ赤に塗ったのばかりなもんだから“ご当地の恥”、という皮肉も入っている。
その新瀬戸駅から少し離れた山のどてっ腹に、トンネルみたいな穴があるのは随分前から知っていたが、入り口は木の板で塞がれてて、反対側の出口も無かった。
それが昨日、中に明かりが点いているのに気付き、トンネル工事して線路延長?と思ったのだ。
「ボロ電車ばっかりの会社が新線ってありえねーだろ」
コウタがメガネの位置を直してため息一つ。
「照明じゃ無くて夜光塗料とか、そういう能力のあるカビやキノコじゃね?」
ヨウヘイも否定組。
「でもあの断面って車両限界に照らしてピッタリだぜ」
「そうかもしれないけどさ。新瀬戸駅って頭端(とうたん)どんづまりで、広場の向こうはすぐ川じゃん。駅前広場を左に曲がって、ちょっと先の交差点を右に曲がって、そんな感じだろ?路面電車なら曲がれるかも知れないけどさ。18メートル級だぜ?」
「路面電車買うんじゃね?名鉄(めいてつ)が岐阜の路面電車全部切ったじゃん。モ510とか来ないかな。ゲージは合うし」
「ホーム高さどうすんだよ。大体わざわざ普通の電車と路面電車別々のシステム用意する意味がない」
専門用語が飛び交う会話の通り、彼らは鉄道大好きである。長々解説は避けるが、ユースケは新瀬戸駅から線路を延ばし、トンネルへ新線を敷こうとしているのではないか、と言うのに対し、そんなことしたら急カーブ過ぎて既存の車輛じゃ曲がれない。路面電車なら可能だろうが、新たに路面電車用の諸々準備するわけがない、というわけである。
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(つづく)
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