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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-001-

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“彼女”はまだ登場しない。
 訪れるきっかけとなった、やりとりを先に。
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-序章-
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 メガネの男が1名、壁際にセットされたパソコンデスクに向かい、キーボードを叩いている。
 膝の上に開いた“理科年表”を見ながら何か書き込んだと思えば、唐突に笑ったりして、作業内容を知らぬ人間が見ればかなり怪しい光景である。
 男はまだ若い。着衣は上下とも青いジャージ。室内着としてもかなり“ダサい”姿ではある。大振りのコーヒーカップを度々口に運び、無精ひげに埋もれた顎のニキビをポリポリ掻いたりしている。まぁ、プライベートな時間であるから、そこまで書いたら可哀想な感じもある。
 玄関ドアの開く音がした。
「ただいま」
 熟年とおぼしき女性の声である。男の母親だ。
 少しあり、足音がし、パソコンデスク脇、リビングのドアが開いた。
 母親の両手には買い物袋。と、付き従いにゃーにゃー何かを訴える三毛ネコ。尻尾を母親の靴下に絡めたり、首の後ろを擦り付けたり。
「学(まなぶ)、あんたさぁ、オカルトな小説書くの好きだったよねぇ」
「なんだ唐突に」
 学と呼ばれたメガネ男は、面倒くさそうに答え、それでもキーボードから手を離して母親の方を見た。
 相原(あいはら)学、22歳。この春大学を卒業したばかりの電気エンジニアのタマゴ。背はそこそこあるが、どう見てもおしゃれ外見に気を遣うタイプではない。彼自身は“オタク”を自認している。趣味はファンタジー小説を書くこと。
「……そのヒゲ剃りなさいよ」
「毎日こう製造ラインでコキ使われると剃る気も失せるんだよ」
 メーカーの新人研修はラインで製品の製造実習……良くあるパターン。ただ、彼の発言はライン従業員の方々に甚だ失礼である。最も、呑気な学生から、いきなり9時5時で動き続けるという労働形態への移行は、率直な感想としてそうなるのであろうが。
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(つづく)

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