【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-24-
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「俺は魔女でも構わない……じゃぁ、とりあえずこれだけ渡してくれ。礼だ。女って花好きじゃねぇか。異教徒もそうだろ?」
「おっとケシの花はお断りだぜ。持ち帰ったら死刑だ」
「これは違うよ。好きな女が出来たら渡そうと思って、紛れ込ませてこっそり育てた」
「ポピーか?それなら請け負った。さあ、悪いけど彼女の治療が残ってるんだ。しつこいと嫌われるぜ」
それはウソ、と彼女は言いたくなった。おっしゃる通り勘はいい。すごくいいですよ。人の考えてること判ろうとすれば百発百中ですよ。
「わかったよ。ちゃんとそれ渡せよ異教徒」
彼女はベッドの枠につかまって立った。が、歩き出した時には、彼の背中が遠ざかるところ。
貧血起こして座り込む。
「おいおい起きるには早い。まぁ聞いた通りだ。また来るぞ。ありゃ本気だ。どうするね?」
スタッフはニヤニヤしながら、無造作にちぎられたのであろうポピーを一輪、彼女の前へ差し出した。
勘がいい、それは本来なら、この時点で事の成り行きを察知して然るべきだった。
だが。貧血では頭が回らない。
銃声の轟きが、いやに間延びして聞こえた。
爆竹、或いはかんしゃく玉の破裂音と何ら変わりなかった。乾いた音が一発、残響を持って崖下一帯に広がった。
「あのガキさっき安全装置……」
医師が言いかける。
彼女は気付いた。それは違う。そして、立ち上がって向きを変え、見たもの。
左側頭部から血煙を噴き上げる少年の後ろ姿であった。
走る姿が、糸の切れたマリオネットのように力を失い、慣性の法則に従ってそのまま前の方へ倒れ込み、二転三転。その〝プレゼント〟であろう、小箱が宙を舞い、落ちる。
狙撃されたのである。
なぜ。彼女はテントから走り出そうとし、
その小箱が、中から火を噴き、火の玉を形成するのを目撃する。
目を閉じると、遅れて爆発音。
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(つづく)
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