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真っ赤な電車の秘密の仕事-5-

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「はじでんは元々亜炭(あたん)を運び出すために建設されたんだ……」
 口語体では長くなるので要約する。まず、亜炭とは純粋な石炭になりきれなかった植物の化石と考えて頂きたい。用途は石炭と同様に燃料。当時の地層から掘り出す。燃料としての質は悪いが、戦争中の話で、使えるものは何でも使おうとした。船に乗せて川沿いを運ぶが、最終的に繁栄町(はんえいちょう)を通る省線(鉄道省の路線。現JRの遠い先祖)の貨物列車に連結するべく、はじめのせとまで線路を敷いた。
「だから川沿いギリギリに駅があるんですね」
「そういうこと。駅前広場は船着き場だったのさ」
 その後戦争が激化、長野県松代(まつしろ)に地下基地(いわゆる松代大本営)を作ることになり、そちらへ向かう中山道本線への新線計画が出来上がった。
「そしてこのトンネルを掘り始めた、というところで戦争に負けた。計画も取りやめ。そんな感じさ。市役所前駅に行く途中、保線の資材庫があるだろ。あそこから別れて、ぐるっとUターンして、このトンネルに突っ込んで、そういうつもりだったのさ」
 駅長は言い、そういう経路にすれば、はじめのせと駅の構造を変えずに済む上、このトンネルまで上ってくる坂道を緩く出来ると説明した。
「ただ真っ直ぐ線路敷けばいいってわけじゃ無いんですね」
「そういうこと。さて、見せたいものはこれだ」
 駅長は暗がりの明かりを付けると、かぶせてあった青いビニールシートをめくった。
「100円電車」
 コウタが言った。デパートの屋上遊園に良くある、コインを入れてぐるぐる走る小型の列車。
 車輛はおんぼろ新幹線、対し、線路は分解して積み上げてあるが、アルミ製の新品。
「これってはじてつストアの……」
 屋上遊園にあったものだとヨウヘイは言った。立て直しの際全部撤去。
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(つづく)

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