真っ赤な電車の秘密の仕事-8-完結
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ヘッドライトがサンタの目で。
ヒゲ模様のストライプをまとった“はじでんクリスマス号”は、繁栄町とはじめのせととを往復し、往復割引切符の効果もあって、多くの子ども達をトンネルの中の“サンタワールド”へ運んだ。
“乗り物のまち”と“お人形のまち”が用意され、それぞれ手持ちのミニカーやおもちゃの電車、人形やロボットを配して遊べるのは前述の通りであるが、床面直置きは変更され、発泡スチロールの山でかさ上げされ、更に各ジオラマのそこここに穴が設けられ、下から身体を入れられる構造にした。単に手が届くだけではなく、自分がそれぞれの街の住人になって、その目線で眺められるようにしたのである。お人形のまちで言えば、昔からある女の子向けのお人形とアニメのフィギュアが並んで歩き、そこに時たま正義のヒーローやロボットが混じったりした。むろん怪獣も出現したが、ヒーロー軍団がよってたかって退治した。
基本的に乗り物が男の子を意識、お人形が女の子を意識してはいたが、ミニカーだらけで大渋滞になったことで女性警官の交通整理が出現したり、ミニカーがお人形のまちにも現れたりと、やがて両者は混交を開始した。余ったおもちゃの線路が発見されると、お人形の街に新線が建設され、そのうち、双方のまちの間に折りたたみの机が並べられ、まちの間を結ぶ大延長接続工事が始まった。結果、普段畳一畳程度のスペースでぐるぐる走るおもちゃの電車が50メートルの直線線路を走ることとなり、家庭では実現し得ない光景に男の子達は大いに興奮した。
そして、二つのまちの往復に、新線建設の資材運びに、3人が代わる代わる運転する100円電車は大活躍したのであった。
「発車します。ドア、無いけどシェリエス(閉まります、の意)」
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※作者註:100円電車のIHをぶっかいた非接触給電システムや汎用インバータを使った駆動法は「机上の空論」レベルであり、実証したわけではありません。安易な真似は事故の可能性があるので止めて下さい。何かあっても責任は取りません。
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真っ赤な電車のひみつの仕事/終
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