彼だけじゃなくて~「リトル・アサシン」あとがきに変えて~
レムリアの話はシリーズであり、順を追って読むと彼女が成長しているわけだが(本人ムネばっか気にしているが)、じゃぁいきなりアルゴ800枚読めってのもどうかと思うので、よらずどこから読んでもいいように作ってある。ただ、今回この話の前と後では彼女のパーソナリティに確実な変化が出そうである。
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戦乱・疫病・天災と多く人命を失われた地を知るので、人体を見舞った凄惨な有様を見ても「悲しいけれど慣れてしまった」という彼女であるが、現実味は無かったにせよ、「結婚してくれ」とまで言ってきた男の子が、文字通り目の前で木っ端微塵になってしまった衝撃は相当なものだったようだ。ハイ本音言ってごらん、相原には言わないから。
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「自分に対する『思い』まで吹き飛ばされてしまったような気がした。自分に対する思いを否定されたような気がした。そして、そうやって自分のことばかりに帰着して考えてる自分に嫌悪。死んでしまったのは彼なのに」
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こと救助とは「人格としての個」を表に出さない行動の代表例だと思うが、彼女の場合なまじっか「ただ、そこにいるだけで」人を惹き付けてしまうので、「個」がどうしても出しゃばってしまい、意識思考に常在せざるを得なくなる。ましてや思春期、人格形成期であって、「全」の中で「個」の立ち位置を見定めようと常に心理が動いている。遺伝子的に勝手に動く。すなわち「自分に帰着する」のである。そしてそれは、書いたように救助という場においては矛盾であり懊悩の元になっている。
実はある意味救いが必要なのは彼女なのかも知れぬ。スキル上自活は出来るであろうが、じゃぁそれは例えば一人暮らしのOLさんと何が違うのか。相原は彼女を愛していると公言して憚らないわけだが、「いとこの兄ちゃん」ポジションは維持している。否それは相原なりにレムリアと一般独身女性との差に気付いていて「見守っている」とした方が正しいのかも知れぬ。何か足りなさを感じていて、その状態で「木っ端微塵」にされたのが、恐らくこの時点での彼女なのだ。昆虫でサナギの形態を持つ種は(完全変態という)サナギの中で一度ドロドロになって作り直されると言われるが、木っ端微塵は似たような状況に彼女を持ち込んだのかも知れない。
個人的に思うに、このままを保持して羽化するならばまさに女神である。燦然たる輝きを放つ若き王女に脱皮する可能性を秘める。
その時はいつ来るか、然るべき時、その示唆は次の物語を紡ぐであろう。
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