【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-028-
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逃げている様相である。必死であり、空を掻くように前方に腕を伸ばし、前のめりになっている。体より意識が先行している。そんな感じ。
〈由利香ちゃん〉
それは相原の意識に、マッチの炎が点るように、唐突にポッと浮かんだフレーズである。
ただ、浮かんだ理由を相原は知っている。
レムリアである。彼女は逃げる男の意識から、男が他でもない由利香ちゃんをホーム下へ突き落とした、と、読み取ったのだ。
時を平行して二つの事象が生じる。
「非常停止お願いします!」
まず、相原がホームの柱を指さしながら声を放つ。駅のホームには、作動させると、“緊急停止信号電波”を近隣の電車に送信する、非常停止ボタンが設置されている。いたずら防止の観点から周知はされていないが、乗客が押して構わない。その操作を依頼した。
(秋葉原の当該ボタン)
もうひとつの事象。
それは、列車接近の放送を聞き、寄りかかっていた柵から歩き出そうとした男性が、読んでいたスポーツ新聞を折りたたもうとして、数ページをホームにバサバサと落とした、というもの。
そして、その、落ちた新聞紙の上に、赤ら顔の男の足が乗り上げる。
男は、新聞紙によってズルリと滑った。
コンクリートのホームに転倒し、したたか顔を打ちつける。
その上を相原が飛び越え、レムリアはレムリアで別ルートでホームの反対側へ。
相原は山手線の線路敷内に目をやる。
右方、新宿駅方向。
レールとレールの間、幅1067ミリの部分に、見知った少女がうつ伏せに横たわっている。
さらに新宿方向へレールに沿って見やる。
巨大ターミナルを、加速しながら抜け出してくる、ステンレスにグリーンのストライプ。
ブザー音が響き渡る。誰かが非常停止ボタンを押してくれた。
「ありがとう!」
相原は叫び、躊躇無くホームから線路へ飛び出す。
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※本当はやってはいけません。ホーム端から手を振って知らせるなどで対応しましょう。
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(つづく)
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