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【恋の小話】ポラリス(2)

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「な、ないよ。さすがに。プラネタリウムがせいぜい」
 ふう、うまく逃げたぜ。
「そうなんだ~。プラネタリウムかぁ。久々に行ってみたいな」
 さくらちゃんの目配せにオレは気付いた。
 オレはニヤッと笑って返した。
 帰りがけ、彼女と別れてから佐藤の家に寄らせてもらう。最低限でも勉強だ。知ったかぶりは男の恥。
 ところが本棚見てびっくり。その科学雑誌の別冊特集で“宇宙創成”“超ひも理論”“ビッグバンとインフレーション宇宙”とか、後はズラリと並んだ“天文年鑑”。
 それらの中見て判ったのは、天文年鑑というのが月齢と天文現象をカレンダー風に並べた本だってこと位。入門者向けの本は無い。皆無というか絶無。
「オリオン座、って言われてアレだって判る?」
「わきゃねーだろ。名前は知ってるけど。でもさ、大体お前どうやって覚えたんだよ」
「小さい頃の図鑑とか捨てちゃったからなぁ」
 その言葉にオレはギョッとした。とんでもないことに気付いたからだ。
「捨てるって、必要なくなった、からだよな。つまり覚え……」
「たよ。坂口だって敵ロボスペック全部言えるじゃん」
 佐藤は、オレがゲームの敵方ロボット覚えてるのと同じだと前置きした上で、星座については“星図”というのがあればよく、どの星座がどう見えるかは頭の中。更に惑星の位置と主だった日食月食は暗記していて、いつどこで何が見えるか把握しており、彗星が出た時だけ雑誌やネットで情報を取る、と言った。
「ああちょっと待って」
 佐藤が出してきたのは“星空年鑑”という雑誌。
 そこに挟み込まれていたDVD。入っていた紙袋ごとビリビリとちぎってオレに寄越す。
「こいつ見るといいよ。来年の主な天文現象とか、なんで月はいつもウサギのいる側を向けてるのか?とか全部入ってる。それ見ときゃとりあえずプラネタリウム行っても困らないから」
「月のウサギ?」
「月の裏側って見たこと無いだろ?その説明が入ってる」
「……ああ、そういや裏って、ないな。んなこと考えたことも無かった」
 オレはちょっと怖くなった。さくらちゃん星好きなら、それこそ、佐藤のように“そのくらい当然”なんじゃないのか。
 よく、歌の歌詞に星が出てきて、カレシとカノジョがちゅっちゅっちゅ、とかやってるが。
 一夜漬けと生返事じゃ到底追いつかない。自分のセリフを後悔する『あ、オレも』。
「どうしたんだよ」
 DVDを手にボケッとしているオレに佐藤が怪訝な目。
「オレさくらちゃんに星が好きだって言っちゃったんだよ」
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(つづく)

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