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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-029-

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 ブザーが鳴り渡って程なく、新宿を出た電車から大きな音が発せられる。バシャッという空気の吐出音であり、それは非常ブレーキの作動を示す。
 相原は線路に着地する。ここに到達せず止まるであろうという判断による。傍らには既にレムリアが降り立っている。
 すると背後、隣の線路に電車が滑り込んでくる。原宿方より新宿方へ向かう外回りの山手線電車である。
 同様にこちらにも急ブレーキが掛かっているが、ここまで行き着いてしまったのである。30トン近いステンレスの塊が11両。その慣性モーメントは容易に速度をゼロとはさせない。
 電車が減速する。運転士と、窓際の乗客達が、こちらの線路の状況に目を向ける。
 何かが折れる鋭い音が、その外回り電車の先頭から聞こえた。
 跳ね上がり、くるくる回りながら飛んで行く、白い棒状のもの。
 彼女の杖。
 折れ飛ぶ彼女の白い杖。
「大丈夫?ねぇ大丈夫?」
 線路の上でレムリアが声をかける。由利香ちゃんは額から血を流し、端から見て判るほどにぶるぶる震えている。
「私たちだから。さっきの秋葉原の私たちだから」
 呼びかけて手首を取る。
 その瞬間、由利香ちゃんが痛そうに身体をのけぞらせる。
「手を打った?手を打ったんだね?」
 レムリアの問いかけに由利香ちゃんは頷いて答える。そして、そのまましがみついて泣き出してしまう。
「……学だめだよ」
 レムリアは由利香ちゃんを抱き寄せながら、厳しい母親のようにひとこと言った。
 相原の目を見、その心に芽生えた義憤に気付き、釘を刺したのである。
「確かに、あの男のしたことは万死に値する。でもだからってあなたが動く必要はない。そんなことであなたが人生棒に振るような価値が、あんなのにあると私は思わない。だからお願い。その矛は収めて」
 相原は何も答えず、ホームを睥睨して目を離し、散乱した由利香ちゃんの荷物を紙袋に戻し始めた。
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(つづく)

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