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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-048-

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 女の子は廊下に描かれた(おそらくはテープを貼った)“センターライン”をまたがないように注意しつつ、給食ワゴンを避けつつ、うつむき加減でこちらへ歩いてくる。
 そのすれちがいざま。
「こんにちは~」
 レムリアは女の子に声を掛けた。
 それは信濃町の場合、次の瞬間には子ども達に囲まれる事を意味した。しかし。
「こ、こんにちは……」
 女の子はおどおどした感じで型どおりにそう返しただけで、すぐに目線を外し、元通り黙々と歩き出した。
 レムリアは立ち止まったまま、去って行く女の子の背中を追う。その向こうには、ナースステーションから半身を出して見ている婦長。
 婦長がこちらを見て目が合う。レムリアは唇を噛んだ……が、しかし一瞬だけで、ニッコリ笑って会釈をし、再び歩き出す。
「例の女の子に会わなくていいのけ?」
 相原の問いに答えず、もちろん、会いに行くこともなく、エレベータに乗る。
 ドアが閉まると、文字通り溜め込んでいたのを吐き出すように、大きなため息。
「今日はやめといた方がいいと思った。そんだけ」
 レムリアは言った。
「ごめんなさいね」
 堺さんがぽつり。
「効率第一で、どうしても素っ気なくなってしまって……院長先生と婦長さんはご夫婦なんです。だから誰も……」
 そこでエレベータは1階に着いてしまったが、この病院にはテレビドラマ的ドロドロが裏にあると容易に想像が付いた。堺さんが唐突にそんなことを口にした理由は、察してください、であることに相違あるまい。
 堺さんに辞し、入場者バッジを受付に返して病院を後にする。
 レムリアは車寄せで立ち止まると、背後のビルを見上げた。おもちゃの国のお城のような外見であるが。
「あの状態で会いに行ったら逆に当の彼女に迷惑掛かるかもと思ったの。ここはまるで企業秘密を隠してる工場みたい」
 呟き、背にして歩き出す。
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(つづく)

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