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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-058-

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「私そんなキノコ食べてませんよ」
 レムリアはいきなり言った。
「え?」
 母親がとまどいの表情。その時、レムリアの目は怖いという印象を与えたかも知れぬ。
「姫ちゃん」
 明るく応じる声がし、由利香ちゃんが壁づたいに奥から出てくる。レムリアは彼女が来るのを待ち、一声掛け、その手を取った。
 続いて一人残されては無意味か“押しつけがましくないテレビショッピング”が、黒い革カバン片手に、営業スマイルを浮かべ、やってきた。
 オールバックでスーツの男。そのオールバックはピッシリとセットされている。
「あなたがそのお友達ですか?」
 口の端にしわを寄せ、ニッコリ。
「私そんなキノコ食べてません。勝手なこと言わないでください」
「これは参ったなぁ」
 ロボットのように笑う。男は口元こそ笑みの形を作っているが、放つ目線が凍るように冷たく、彼女を小馬鹿にしているのが見て取れる。フン、小娘が。そんな感じであろうか。
 再掲だが、“とげとげしさは、幾ら表情や口調を繕っても隠しおおせるものではない”。
「キノコなんかで治るわけがない。馬鹿馬鹿しい」
 レムリアの吐き捨てるようなそのセリフは、営業マンからスマイルの仮面を奪った。“カモの客”の面前で、見知らぬ小娘に露骨に馬鹿と言われては、反撃せざるを得ないであろう。
「おい君……」
「効くというならキノコに含まれるどんな成分が体内でどう変化してどこの器官や細胞にどう作用するのか明確に述べてください。あなたがおっしゃるように彼女のような症例で作用するというなら医学界が見逃すはずがない。ノーベル賞級の仕事ですからね」
 レムリアはたたみかけるように言った。だが営業マン氏はこの程度の問いかけは想定内であるらしく、怒りの表情から慇懃無礼とも取れる笑みに遷移し、ニヤニヤ。
「キノコがクスリのように作用するわけではありません。気功との併用で身体の持つ自然治癒力を高めるのです。判りますか?しぜんちゆ」
 聞き分けのない子どもをあしらう……営業マン氏の態度行動が、そういうスタンスであることは説明するまでもあるまい。
 対しレムリアはその黒々とした瞳でまっすぐに見返した。
「膝小僧すりむいて、そのキノコと気功を使うのと、ツバ付けてなすっておくのと、どちらが早いか試しましょうか?それで?自然治癒を主張するからには彼女の視力がそれで回復するという根拠があるわけですよね。だったら教えて頂けますでしょうか。現状所見、すなわち視力が失われている理由とその根拠。及び自然治癒によってどの細胞器官がどう変化して視力が回復するのか」
 営業マン氏のスマイルが徐々に正体を現してくる。目の前の少女が単なる小娘ではないと気づいたようだ。瞳孔がアウトロー特有の様相、刃のような鈍い銀色を帯び始める。
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(つづく)

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