【恋の小話】ポラリス(3)
←前へ・次へ→
.
「森さん太郎坊のこと知ってるから……相当だと思うぜ。あそこは“いつ何が見えるか知っている”人間が、最高条件で見たいと思って出かけるとこだから」
プラネタリウムを見た。その後……を考えてオレは怖くなった。あのプログラム面白かったね。あれは……。
何か訊かれたらどうしよう。
「オリオン座も判らないじゃ軽蔑されるな」
「そうか?『天文って深いなぁ。星光ってるの見るのが好きじゃダメだなぁ』でいいじゃん。彼女の方が沢山知ってたって別にいいんじゃねえの?」
「かっこ悪いじゃんか」
「知ったかぶりの方が余程かっこ悪くねえか?大体、彼女に対する裏切りじゃんか」
ハッ、とした。
佐藤はオレより背が低いし服ダサいし、スポーツも駄目。
対して、下駄箱に何度か手紙が入っていたことのあるオレ。
なのに今、多分佐藤の方が男としてかっこいい。オレは思った。
「なぁ、天文の勉強ってどうやるんだ?教科書に書いてあるのは知ってるけど、その先は……」
オレは訊いた。興味が無いことってどうやって知るんだろう。
ロボットのスペックはゲームで必要だし、カッコイイと思ってそれ系の本を読んだから。
もうそのゲームもアニメも終わったけど。
「とりあえず一夜漬けだろ。いつ行くんだプラネタリウム」
「まだ決めてない」
「行く日決めて、ネットで内容見て予習したら?来いよ」
佐藤の家のパソコンで、都内のプラネタリウムを幾つか検索したら、そのアニメの声優がナレーションを担当してるところがあった。
「いいじゃん、小さい頃この人の声好きだったって言えるじゃん」
「ああ、そうか」
そしてプログラムは“ふたご座流星群とベツレヘムの星の謎”。
「全っ然わかんねぇ」
「12月だからなぁ」
佐藤は言うと、そのままパソコンで“星空シミュレータ”を起動した。
.
(つづく)
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】城下 -05-(2023.09.30)
- 【理絵子の夜話】城下 -04-(2023.09.16)
- 【理絵子の夜話】城下 -03-(2023.09.02)
- 【理絵子の夜話】城下 -02-(2023.08.19)
- 【理絵子の夜話】城下 -01-(2023.08.05)
「小説・恋の小話」カテゴリの記事
- 【恋の小話】星の川辺で-20-完結(2013.10.26)
- 【恋の小話】星の川辺で-19-(2013.10.19)
- 【恋の小話】星の川辺で-18-(2013.10.12)
- 【恋の小話】星の川辺で-16-(2013.09.28)
- 【恋の小話】星の川辺で-15-(2013.09.21)
コメント