【恋の小話】ポラリス(6・終)
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プログラムは佐藤の予想通り、ベツレヘムの星有力説の幾つか紹介とシミュレーション投影。
『あなたが東方の三博士だとしたら、どれをイエスの誕生と考えますか』
どれも望遠鏡で見たら素敵だろうな……で、この流れ。
「正直言うとさ」
オレは猛勉強したことを話した。
「だから、佐藤は、オレが今日誰とプラネタリウムに来てるか知ってる」
「そっか……」
さくらちゃんはキャラメルマキアートどうたらこうたらが入ったマイマグカップをテーブルに下ろした。
「ごめんな。誰にも秘密って……」
「いいよ。むしろ反省すべきは私の方。私佐藤君振ったんだよね。率直ダサいし。星見るのいいけどコイツと一緒とか想像したくねぇって。ひどい女だよね。男の子をアクセサリー扱いしてるってことだもんね。いいよ軽蔑しても」
オレは冷や汗が出てきた。同じような見方はオレも女子に対してしてるので大きなことは言えない。
それよりも、佐藤は全て知ってて、それを黙ってオレに天文学の面白さを。という事実。
『頑張れよ。知ったかぶり言う時は「記憶が違ってたらアレだけど」って最初に言うんだぞ……』
「あいつは、そんなこと一言も言わなかった」
オレは、それだけ言った。
「え?」
「だから大丈夫。あいつが黙っていたこと。教えてくれたこと。それをムダにしないのがオレ達のあり方だと思う。悪いけどオレ知らないこといっぱいあるし、オシャレなデートとか雑誌やドラマみたいに出来ない。でも、その代わり一緒にそういうこと考えて行けたらいいなって」
「私たちの行動基準ってことだね。賛成。探してこ、北極星」
オレ達うまく行く。オレは確信した。
そして、佐藤と親友であり続けるだろうことも。
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ポラリス/終
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