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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-063-

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 まるで強制リセットボタンを押されたロボットである。きょとんとなり、それまでの動作を全て忘れた、そんな表情で店の売場に立ちつくす。
「あの、えーと、私は……」
「いらっしゃいませ。何かご用ですか?」
 レムリアは可愛らしく小首をかしげて問い、落とした携帯電話に足を載せて隠した。
「いえ、あ、すいません、何かの間違いです。失礼します」
 恥ずかしそうな表情を見せ、慌てて店を出ようとする。
「いいえ、二度と来ないでくださいやがれ~」
 引き戸を開けたその背中に、レムリアは『またお越し下さいませ』のイントネーションで、ニッコリ笑って丁寧に言った。ちなみに“くださいやがれ”は、相原から教えてもらったネットスラングである。
「はい、二度と来ません……」
 男は首を傾げながら、しかし素直な口調で応じ、走り去った。
 レムリアはその姿が視界から消えたのを確かめ、携帯電話を拾い上げた。
「もう来ないでしょう。これはコピーを取って。領収書や診察券があれば、一緒に警察へ渡してください」
 レムリアは言い、手のひらから“戦利品”であるパンフレットと“売り込みマニュアル”を出現させると、携帯電話もろとも母親に渡した。
「は、はぁ……」
 母親が困惑に眉をひそめる。言い争いで専門用語が飛び交ったかと思うと、一転して男は“全て忘れた人”になり、立ち去った。理解せよという方が困難。
「申し訳ありません。看護師としてキノコの話聞き捨てならず差し出がましいことを致しました。端的に申しますと、今の男は気功治療院と手を組んだ健康詐欺です。キノコにそんな効能はありません。しかも、しつこいようですので、催眠術を少々用いました。これであの男には“ここは来てはならないところ”という刷り込みがなされたので、来ることは二度とないでしょう。もちろん、代々木の気功も行く必要はありません」
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(つづく)

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