【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-066-
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「そうすると気功というのは?」
「それだけ捉えてインチキというのは正しくない。と言えるかも知れません。但し条件があります。よく病気やケガを治すことを“手当て”と言いますが、これは本来病んでいる部分に手のひらを当てたり、かざすことを意味します。動作は気功ソックリですよね。この大家が例えばキリストさんです」
レムリアは言った。譬えとしてこの大工の息子がスッと口を突くあたり、彼女が欧州の出自であること、および、魔法が過去キリスト教と繋がりを持っていたこと、と、無関係ではあるまい。ただ、多く日本ではこの手の話が登場すると強い拒否反応が示されるものであるが。
「そして、シロアムの池に行って洗いなさいと言われた。そこで、彼は行って洗い、目が見えるようになって、戻ってきた」
由利香ちゃんは新約聖書“ヨハネによる福音書”の一節をすらすらと口にした。おっと、宗教臭いと読み飛ばさないで頂きたい。由利香ちゃんが即座にこの一文を持ち出した理由を、レムリアは見抜いている。ちなみにこの部分は、生来視力を失っていた男性が、イエスによって見えるようになる、という内容である。
「ひょっとして悪霊のせいだとさんざん言われましたか?」
レムリアは尋ねた。
「ええ。はい」
母親が目を伏せる。その悪霊を祓えば……。典型的な霊感商法詐欺である。そしてその過程で、由利香ちゃんは聖書のこの文言を再現してやる、など言われたのであろう。内容が内容だけに憶えてしまったに相違あるまい。
目は病気が原因である。しかも由利香ちゃんが物心つく前の話。意図したことではない。
それをいきなり悪霊のせいにされる。そして、悪霊が取り憑いたのは自分たちのせいだ、と言われる。
レムリアは衝動的とも取れる動作で由利香ちゃんを抱きしめた。
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(つづく)
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