【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-074-
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一通りプレゼントが行き渡ったところで、手品少女二人は、部屋の前後に離れる。レムリアは腕組みしている相原の頭からシルクハットをひょいと取り、その際、相原傍らのシスター二人に会釈。なおここまでの間、カメラマンは“見せ場”が次々に、しかも離れた場所で起こるため、シャッターどころかピント合わせすら一度も成功しなかったと付記しておく。
「さて次は不思議なテレポーテーション手品です」
そこでルームのドアが開き、移動ベッドに横たわった少女が看護師に伴われ現れる。輸液(点滴)装置がセットされ、酸素吸入補助装置のパイプを鼻にセットし、頭にはバンダナ。表情は一見して辛そう。
彼女こそ、魔法を求めた当の女の子であった。辛そうな表情のゆえは、痛みが間断なく続いているせいであろう。年齢は9歳というが、憔悴の見えるやつれた身体は、表情の幼さを除けば、成人以上の年代かと思わせる。
少女のベッドの電動装置がペダル操作され、上半身が起こされる。
レムリアはベッドの動きが止まるまでの間、まばたきもせず彼女を見た。
下唇を噛んで目を閉じる。端から見れば次の出し物を考えているようだが、その仕草の真意を知っているのは相原だけ。“一瞬で状況を把握する”。ちなみにこれは“薬剤の投与”であると知る。端的には大げさな注射と言えば理解しやすいか。極めて強い副作用を有するため、あろうことか投薬自体が命がけなのだ。
レムリアは相原をちらりと見る。相原は腕組みしたまま頷く。
レムリアは気を取り直したように、女の子のベッドに近づき、シルクハットにスーツ姿、を生かして、中世貴族が姫君にする風に、恭しく挨拶。
「本日はわたくしのショーにお越し頂き誠にありがとうございます」
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(つづく)
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