【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-079-
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果たして婦長の顔が怒りを帯びる。
そして婦長は……看護師を統括する者にあらざる軽率さで、怒鳴った。
「黙りなさい!」
“ロッテンマイヤー”婦長は、調子づく子ども達を一喝したつもりだったのだろう。
子ども達がびくりと身を震わせる。
ベッドの少女も、頭の真上で怒鳴られ、身を震わせた。
だが、彼女においては、単に怒鳴られる以上の深刻な結果を与えた。
レムリアに対し、院長が事前に取った、あらかじめショーの内容を聞くという行動は、少なくとも正しかった。
“驚かしてはいけない”
「う……」
セリフの形で記することは不適当であるかも知れぬ。それは彼女が声として発したというより、気道を通過した空気が、声帯を震わせて出た音。
ベッドの少女が前のめりに倒れ込む。頭から外れ、ベッドの上に落ちるティアラ。
呼吸補助装置が異常を感知し、警報を発した。
非常事態が生じたことは子供達にも容易に知れた。
「まいかちゃん!」
少女の名前であろう。別の女の子が声を出す。
場にいた看護師3名が動き出す。レムリアは少女の手首を取る。
まいかちゃんの担当看護師がベッドのペダルを踏んだ。
起こされた寝台が倒れ、少女の上半身が仰臥の姿勢へ。レムリアは少女の胸を見、手で触れ、口元に耳を持って行く。
「徐脈徐呼吸」
レムリアは言った。意味、脈拍呼吸とも所定の回数以下。
付き添いの看護師が円い目でレムリアを見る。
「あなた……」
レムリアは少女の胸に耳を当てた。
「これ呼吸補助だけ?」
尋ねると看護師は「はい」と頷いた。
「判りました。cardiac arrest。人力でCPR開始します。ドクターおよび除細動装置の手配願います」
それは心停止であり、心肺蘇生を始めるという意味。
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(つづく)
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