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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-080-

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 実は以前、信濃町に入院している際に、レムリアの向かいのベッドでやはりお年寄りが心停止になったことがある。この時彼女は相原に伝える意図もあったろう、心停止、人工呼吸と日本語で状況を口にしている。
 だが、この場でそう言えば子ども達が不安がる。そして同業者には略号で良い。
 レムリアは心臓マッサージを始め、動きながらベッドの下や周囲を見る。探している。
 一方、看護師達は、レムリアを手伝うでなく、一様に驚きの表情。
「徐細動器は!こんな強いの入れるのに用意してないの?」
 レムリアは誰にとも無く詰問を発した。比して看護師達は互いの顔を見合わせた。
 それはさながら予定外の状況に出くわした反応である。無論、その一つはレムリアが動いたこと、ではあろう。だが、この状況にはそれ以前の違和感が存在する。
「彼女の状態なら充分そういう……」
 発言の中身、強い副作用を伴う薬を投与する、それは心臓の筋肉に負担を与える。だから、血流を巡りやすくするため横たえた状態で、呼吸等補助が必要。ひっくり返して心臓の筋肉が止まりやすい状態。
 想定される事態への対処はしておくべき。なのになぜ。
「あ、はい。いえそんなことは」
 言いかけるレムリアに、まいかちゃんの担当看護師は絆されたように答えると、婦長を見、次いで躊躇があるのかやや緩慢な動きで、他の二人の看護師へ目配せした。
「じゃぁ私はドクターを」
「機器用意します」
 看護師達が慌ただしく走り出し、担当看護師はまいかちゃんの顔の方へ回り、人工呼吸を開始する。
 そこへ相原が首をかしげながら室内後方より歩き出す。彼にその動作をさせたのも他ならぬ違和感である。
 違和感。すなわちこの命の危機的状況に、対処に二の足を踏むような、ことごとくワンテンポ遅れの動き、病院にあるまじき反応はどうだ。
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(つづく)

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