【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-090-
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「彼女、どんな病気なの?」
その問いにはレムリアが答えた。
「そうか……」
「正直なことを言う。彼女の薬は心臓の筋肉に悪影響を与えるタイプなんだ。だから仰臥位(ぎょうがい:仰向けのこと)だし“驚かしちゃいけない”だった。投薬自体が命がけだったわけ。だから、婦長がやらかした時はハッキリ言って背筋が凍った」
CPRを始める際、レムリアが淡々と事実を並べたように聞こえたのは、実は恐怖感ゆえの硬さのなしたことであったのだ。
「でも……子ども達の気持ちが伝わってきた。やるだけやってみよう、って思った。」
「その気持ちが彼女を救ったんだね」
「えっ?」
「私にくれた物を、あなたは彼女にもあげたんだなって思ったよ。自分のために一生懸命になってくれる人。その存在を知ることがどれだけ、どれだけ心の栄養になるか。安心と平和な気持ちに包まれるか」
由利香ちゃんのそのセリフに、相原がルームミラー越しに笑う。
「そういう状態の由利香さんを見て感想を述べたのが、昨日の電車のおばあちゃんだとオレは思う。心安らかな人間の表情や気持ちは、それを目にした人もまた安らかな気持ちにするんだよ。その点で由利香さん、あなたは素晴らしい宝箱をその心に持ったんでないかい?」
「え……」
二人して後席で赤くなってうつむく。
「乙女をからかって……」
「そ、そうですよ」
「変態商品」
「変態商品」
変態合唱1分間。相原が「うえ~ん」と泣き真似するまで続き、二人は笑い転げた。
由利香ちゃんが言う。
「……あ~面白い。ね、お二人は漫才のショーはやらないの?今日みたいな病院にはそういうのもいいんじゃないかと。にしても変な病院だったね」
「あれは、子どものいる所じゃないよ」
レムリアは笑顔を引っ込め、再び言った。
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(つづく)
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