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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-091-

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「そんなに良くない?」
「うん。人と人とが触れ合うっていう肝心な部分が欠けてる。シスターや看護師さんはよさげだけどね。でも……」
「工場勤めの人間の視点から見ると、あの病院の意図はよーく判るよ」
 相原はレムリアのセリフにかぶせて言った。
「ほう。ご拝聴」
「子ども達の治療じゃない。人体の修繕工場の経営なんだよ。合理化によるコストダウンと人寄せのための宣伝。子ども達は病室に押し込んで、その分必要な目配りは削減、転じて人手が減らせますわな。流れでロビーは暗いし自動ドアも止めてある。その一方で宣伝ネタには記者まで使うし、非常持ち出しにご丁寧にAED突っ込んであるのも、その辺の計算の結果を強く感じる」
 相原は言った。クルマは渋滞に捕まっている。都内西部の大通りの一つ、青梅街道に出る交差点が詰まっているのだ。
「なるほどね。まーあの院長“愛と情熱”ってタイプじゃないみたいだからね。純粋に生物学的に治癒するかどうか、それを可能とする技術が存在するか、それだけで判断してるみたいだからね。昨日漁った論文見る限り。……あー納得した。そりゃ持ち上げられるわ。成功すると判っている手術や治療しかしないって事だもん。実際彼女、まいかちゃんだっけ、宣告されてたんでしょ?」
「と、うちのオカンは聞いたって」
「宣告?」
 由利香ちゃんが尋ねた。
「医者が未来を否定すること」
 レムリアはそういう言い回しをした。
 由利香ちゃんがうつむいてしまう。
「それって本人に直接、じゃないよね。最も、親が言われても、親はそれを黙っていたとしても、子どもはそれとなく判るわけだけど……。
 目と命じゃ、ショックのレベルが違うんだろうな。今ね、あなたの言った精神の状態は肉体に影響を及ぼすってのすごく理解出来る。ダメだと言われる絶望は身体を蝕んでしまう。ああ、私彼女のそばにいてあげたくなってきた。どうしたらいい?」
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(つづく)

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