【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-095-
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「寒くないの?」
ワイシャツネクタイの相原を気にかける。
「全っ然。ヤセの大食いってのは基礎代謝が活発でね」
相原はホットドッグを一口。
「なるほどね。これ暖かいのはそのせいだね」
レムリアは相原のスーツに腕を通し、だぶだぶの袖から手先を出して引き続きドッグを頬張る。小柄な娘に男性用スーツのジャケット。袖から伸びた手先と満月、ショートカットとアメリカンドッグ。
「カラシ来た~」
舌をぺろっ。
相原はその姿をメガネの奥に収め、小さく笑ってジンジャーエールのペットボトルをプシャッと開けた。
「パンを食べたら次は水が欲しくなるだろう。そこで彼が水だと仮定した語は適切にも正解だった」
言いながらレムリアに持たせる。
「それは何か解読したと言いたいの?ヒッタイト人のウリヤの忠誠を言いたいの?」
レムリアは言いながら、その炭酸飲料を勢いよくぐいぐい煽った。
「っあー!」
少しおどけたように目を閉じて声を出し、痛みに近い喉への刺激を逃がす。
相原は少し驚いた表情を見せ、そして小さく笑って。
「よろしかったら全部どうぞ。しかしなぜ解読ネタだと判るかねこの娘は」
「シャンポリオンのせいだね。あの人は11歳でヒエログリフ解読を志し、17になるまでに13の言語をマスターした」
「ほう、誰かさんと似てますな」
レムリアが13歳にして12カ国語を操ると冒頭書いたが、半信半疑の方も多かったと思う。
しかしそういう人間はこのように他にも存在する。ちなみに、レムリアが血筋の力を“誰かのために”と決意したのは9歳の時である。
なお、相原が口にしたのは、ヒッタイト語の解読の糸口となったエピソードによる。この場面に合致するという状況なので持ち出したと見られるが、レムリアの知識水準、嗜好分野を考慮し、知的好奇心をくすぐる意図もあったようである。ただ、彼女が即応してくるとは思わなかったようだ。
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(つづく)
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