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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-098-

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「ずるい言い方」
「仮に今ここで、君がこの月の光を利用して、俺をスーパーエンジニアにしたとする。俺は完璧な製品を作れる能力を得たとする。でもそれ、ブレイクスルーのための新しい発見や、苦労して生み出したって満足感一切無し。答え持ってても方程式がないのと一緒」
「オトナって嫌い」
 レムリアは口をとがらせ、赤い目で相原を見た。
 相原は自分のドッグの残りを全て頬張って、
「仰せごもっとも。でもね。自力でプロセスを踏む事によって初めて身に付くってことも多いのよ。その人ならではの得意な分野、能力であれば尚のことね」
 レムリアは唇をタコよろしく尖らせ、不平をあからさまに表明。
「そういう言い方って、答え知ってる人間ならではの余裕の口調だよね。ねぇ、判ってるなら教えてよ。どうすべきか、見当付いてるんでしょ?ずるいよ。私こんなに悩んでるじゃん……」
「魔法使いに相応しい見当なんか思いつくかい。まだ時間はあるだろ?。ギリギリまで考えてごらんな。紡ぎ出す回路っては脳を働かせないと作られないんだよ。よく知ってるでしょうが。はい帰りましょう。実言うと寒い」
 相原は言うと、くしゃみを一発飛ばした。
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 日付が変わる頃、船は再び丘の上に降り立った。
 レムリアはボストンバッグを手に、昇降スロープに足を乗せ、うつむいたまま振り返った。
 そのまま倒れ込むように相原にもたれかかり、額をはんてんの胸元にぶつける。体のいい頭突きである。
「あうち」
「思いつかない」
 もたれかかったまま一言。どうしてくれるんだこの変態商品、と付け加えても、過剰演出ではあるまい。
 相原は右手を動かし、一瞬躊躇し、レムリアの頬に触れた。
 レムリアがハッとした表情で相原を見上げる。その表情は、瞳の輝きは、幼い女の子の、今にも泣き出しそうな幼い女の子の純粋と透明そのもの。
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(つづく)

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