【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-100-
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「そういうこと。命に制限やこだわりは必要はあるまいて。使える物は皆使う。でね、忘れる前にこれ」
レムリアは相原に向き直ると、銀色のそれに小首を傾げた。
「ウチのカギだ。オレがいなくても君は来てくれて構わない。ウチは君に対してフルオープンだ。我が家は我が家の全てで君の全てを受け入れる。何も隠せず、制限を設けず、全開でね。さて何も言わないのもアレなのでヒントだけ。さっきのサービスエリアは何の形をしていたでしょう」
相原はカギをレムリアに握らせ、手を離した。
「無制限全開だ。フルムーンだしな」
レムリアの目がそれこそ“全開”になった。
洞察を得たのである。相原を見、月に目を走らせ、セレネの手からPSCユニットを受け取る。
カギをウェストポーチに収め、PSCを耳に押し込む。
勢いのままにという感じで相原に抱きつく。否、しがみつく。
「ありがとう……」
相原はよろめき、頬を赤くし、それを見てセレネがクスッと笑う。
相原はセレネにVサインをして見せた。
「さぁもう行きな。……夜通し待機してるから、何かあったら電話してらっしゃい。出来る限りの回答を用意する」
相原はショートカットの耳元に囁いた。
「うん」
レムリアは頷き、笑顔となり、来た時と同じように、元気よく手を振って、スロープを上がった。
「またね!」
相原は腕組みのまま頷く。
次章、彼は登場しない。彼女の心理に、少し詳しく触れてみようか。
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-10-
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月明かりの病室。
照明は用いていない。消灯時間をはるかに過ぎているからである。満月の灯りだけ、であるがしかし、室内は充分に明るい。
ベッドにはバンダナを頭部に巻いた女の子の姿があり、うつぶせ気味に横たわっている。そして、母なる人の手のひらが、背中から腰の辺りを、ゆっくりと、眠くなるほどの緩やかさでゆっくりと、優しく、さすっている。
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(つづく)
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