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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-102-

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「まいか……」
 まいかちゃんは母の呼びかけに答えず、両の手で胸元を押さえ、身体をぎゅっと、胎児のように、小さく丸める。
 目で見て変化が判るほどに、彼女の身体が小さく縮こまる。
 激痛である。激痛に対する生物としての反射で、体中の筋肉が縮み、固くこわばり、身体全体を縮こまらせたのだ。
「痛い。やっぱり痛いよ。すごく、すごく痛いよ。まいか……死にたくない。死にたくないのに」
 母は身を寄せ娘を抱きしめる。言葉がない。痛みという現実を、言葉だけで消すことは出来ない。抱きしめ、さするより他に、出来ることは何もない。
 まいかちゃんは歯を食いしばり、まぶただけ辛うじて開き、その眼(まなこ)にティアラの輝きを収めようとする。それは目を閉じることを頑なに拒否し、溢れ来る光にだけ目を向けようとしているかのようである。確かに、目を閉じること、目を閉じた姿が想起させるもの。そして、訪れる闇の向こうに繋がる絶望。……想起すらしたくないであろうそれらは、目を閉じれば、現実の恐怖として、襲ってくる。
 その時だった。
 ティアラの輝きの源である、月の光を、何かが遮った。
 影であった。
 影が窓よりすっと入り込み伸びて来、ティアラを月から隠してしまった。但し、雲ではない。
 伸びてきた影は人の形をしている。風に揺らぐショートカット、女の子のシルエットだと判る。
 まいかちゃんはゆっくりと、震えながら母親に目を向け、笑顔を作った。
「おかあさん、あのね、魔法の国のお姫様、来てくれたよ」
「え……」
 母親は、瞠目を我が子に向けた。
 死に直面して精神状態に、と思ったのであろう。
 しかしその時。
 気流が、病床の母子を捉えた。
 窓の向こう、開いていれば聞こえるはずの、遠い都市部のざわめきが、今確かに耳に届いている。
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(つづく)

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