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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-107-

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「上も下も星だね」
 まいかちゃんが言った。
 彼女の言う通り、この高度からは、地の灯火は星に覆われた如く。他方天空の星々は、都市から巻き上がる煤煙に阻害されることなく、夥しい数の煌めきとなる。そして、その夥しい煌めきの中にあって、月明かりは戸惑うほどに鮮烈だ。
「少し飛びましょうか」
「うん!」
 レムリアの提案にまいかちゃんは一も二もなく頷く。レムリアは指を舳先に向け、船に加速を命じる。
 西へ向かう。光による日本列島の輪郭線は途切れることなく、地図さながらの形を夜闇に描いている。深夜帯に地域・国家が放つ光は、豊かさと幸せの象徴だ。すなわち、潤沢にエネルギーを消費することが可能であると共に、襲い来る敵から身を隠すため、闇に紛れる必要がない。
「綺麗……」
 遥か下方を飛行機が行く。欧州へ向かう夜間便である。亜音速の夜間飛行を軽々と抜き去って行くことで、この船の速度が知れる。
 12分で地球を一回りすると言ったら、驚異を感じるであろうか?
「プリンセスまいか」
 レムリアは、マストより舳先へと配されたロープを手にして、主賓に問うた。
「何でしょうプリンセスメディア」
「これよりこの船を、姫がぜひにと思う地へ差し向けたいと思います。どちらか、かねてより行きたい、見たいと思っていた場所はございますか?」
 すると、まいかちゃんはすぐには答えず、レムリアの顔をじっと見つめた。
 まるで迷子にでもなったかのような、不安そうな表情である。事態が事態ゆえ、ここに来てようやく夢との疑いでも持ったのであろうか。
 まいかちゃんは、レムリアの元に歩いてきた。
 ガラスの靴で、少し不器用に、コツコツと甲板に音を立てて。
 心配そうな顔で、まいかちゃんが自身を見、レムリアに手を伸ばす。
 まるで、現実かどうか確かめるように。
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(つづく)

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