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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-108-

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 その手をレムリアはそっと握る。言うまでもなく、まいかちゃんに今“確固たるもの”はない。たった今も、この先も。それが彼女の心理を非常に不安定なものにしている。
「大丈夫。私はどこへも行かない。私を呼んでくれたのはあなただから……」
 レムリアは力強く言った。
 まいかちゃんに笑顔が戻る。笑顔を作りながら、その目から涙が流れる。
 そしてレムリアにしがみつく。しがみついて、大きな声で泣き出す。
「ずっと我慢してたんだね。そうだよね。一生懸命頑張ってきたもんね」
 レムリアはまいかちゃんを抱きしめる。彼女の意識を流れる数々のフラッシュバックがテレパシー能力に補足され、まるで自分の体験のように感じられる。
 レムリアは涙を抑える。必死になって涙をこらえる。
 疲れ切ってしまった彼女の心を思う。頑張って、我慢して、闘って……病気の子どもに掛けられる言葉として、圧倒的に多いのはこれらではあるまいか。
 親として、大人の立場として、必死に励まし応援する気持ちはよく判る。
 でも、子どもの側からすれば、我慢・頑張るより以前にまず、病気に対する恐怖が、暗闇の斜塔のように立ちはだかっているのではないか。
 今にも倒れ掛かりそうに立っているのではないか。
 気を抜けば、目をそらせば、その斜塔は倒れてくる。
 のみならず、足下の左右も、背後も、底知れぬ深い闇。
 逃げ場はない。
 その状態で、その状態のまま、じっとそこに踏みとどまることを要求される。
 常に全力を発揮して対峙していないと、全てが終わる。
 生まれてより十指に満たない年数しか生きていない子ども達にとって、青春も恋も知らぬ、“大人”の時空が遥か未来という子ども達にとって、それがどれだけ、どれだけの絶望と恐怖をもたらすか。
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(つづく)

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