【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-112-
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甲板を浮遊する金色の粒子達に、命じるように指を出す。
粒子達が輝きを潜める。金色の粒子達は甲板を淡く照らしていたので、甲板は真っ暗。
そして。
「オーロラ……だよね」
まいかちゃんが気付いた。
風に舞うカーテンさながら、極光が種々色を変えながら天から舞い降り、視界を横切り、揺れ動く。
音もなく。
眼下は湖であろう、鏡のような氷面に自らの姿を映し、静かに舞う光のカーテン。
「こんな綺麗な眺めがあるなんて。あ、あれは何?」
まいかちゃんが気付いたのは湖の傍ら、雪原を行く数頭の動物。
「犬?」
「いやあれは……狼」
「狼!」
驚くまいかちゃん。レムリアは頷くと、船を狼たちに近づけ、速度を合わせた。
雪原を蹴立てて走って行く、5頭ほどの小さな群れ。
「お話ししてみる?」
「えっ!?」
「魔女だもの」
レムリアは指を振るった。
光のリングが飛び、砕けて粉となり、狼たちに降りかかる。
リングを投じたその後も、レムリアの指からは光が尾を引き、まるで残像のように軌跡を描く。
それは魔法がフルパワーであることを意味する。彼女は今、ありったけの能力をもって、まいかちゃんに“マジック”を披露している。
さながら、この一晩に全てを凝縮するかのように。
『珍しい物に乗った人間がいるな』
男の声で、そのように、まいかちゃんには聞こえたはずである。
レムリアがテレパシーを仲介している。動物とのコミュニケーションは魔女のイロハ。従って、今の魔法は狼に対してというより、まいかちゃんに使った、と言った方が正確。
「どこへ行くの?」
まいかちゃんは訊いた。
『食える土地までさ。一族の命を繋ぐ責任がオレにはあるからね』
走りながら答えたのは群れの先頭、と知れる。
群れのリーダー。専門家が呼ぶところのアルファ。
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(つづく)
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