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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-117-

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 去った、終わったという認識が、彼女の意識をどうにもそういう方向に引きずり込んでいるようだ。彼女は、恐らく本能的に、忍び寄るものを、至近まで迫ってきているものを、
 残された僅かを、
 全て、知っている。
「そのあこがれが、シリウスって星を、天空の孤高の狼と呼ばせたのかもね」
 レムリアは言った。会話を途切れさせてはならない。
 空白を作ってはならない。
 次を考える。北極圏に来たついでだ、今度は一足飛びに南極に行こうか……。
 船を南天に指向させ、加速する。伴い、白銀に輝く孤高の星が正面に捉えられ、水平線の向こうから徐々に上がってくる。
「あの一番明るい星がシリウス」
 レムリアは指差した。
 まいかちゃんがその指先に目を向ける。
「そういえばシリウスって、世界のあちこちで、狼とか犬とか言われてるんだよね」
「人類共通の記憶というか認識なんだと思うよ。だんだん野性を失って、野性には無かった地位とか名誉とか、余計なことに悩むようになっていった人間にとって、身近な野性であった犬や狼は、野性の象徴として憧れの存在に変わっていった。だからひときわ輝いて見える星にその姿を見たし、妬ましさが童話の悪者にしたんじゃないのかな。そして……今の狼の彼には、そんな人間たちが、かわいそうに見えたんだよ。病気の時くらい野性に戻ったらどうだって……」
 レムリアは言い、言ったその自分のセリフに、三たびハッとした。
 天啓と呼ばれる洞察が訪れようとしているのを感じている。紡ぎ出される言葉をそのまま口にしてみる。
「人が病気になるのは、人も野性を身体の中に持った動物である証だ。だったら、病気のことは野性に任せればいいじゃないか。変に頑張って人間らしく振る舞う必要がどこにある。
 怖いのも道理。痛いのも道理。必然として存在するモノをなぜわざわざ耐えたり我慢して打ち消そうとする。その我慢自体ストレスだ。発散しなければたまって行く。怖ければ怖い。痛ければ痛い。声に出して何がいけない。人が人である以前に、生き物としてあるがままにあるのはいけないことか?」
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(つづく)

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