【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-118-
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その言葉に、まいかちゃんはポカンとしてレムリアを見つめた。
9歳の彼女にはやや語彙が堅かったかも知れぬ。
要するに。
「我慢しない。頑張らない」
レムリアは、言った。
まいかちゃんの目が大きく見開かれる。
「大事なのは、あなたが、一番、ほっと安心できること。だから私はあなたから離れない。あなたが望むなら、あなたといつまでも」
レムリアは言い、まいかちゃんに向かって両腕を広げた。
これだ、という確信がある。
今のまいかちゃんに必要なもの。
それは恐怖をぬぐい去ること。
“そのこと”を考えずにいられること。
完璧な味方にして、一瞬たりとも目を離さない、全てを託せる存在であること。
相原の言った通り、それに呪文は必須ではない。むしろ呪文ではそうはなれない。
呪文ではない。
頑張れ、でもない。
守る、こと。
そして、
「大丈夫、だから」
レムリアは、言った。
「うん……」
まいかちゃんがしがみついてきた。
レムリアは彼女を抱きしめる。
その目を見つめる。
月明かりの中ではプリンセスまいか。
でも腕の中の少女の真実はそうではない。
憔悴と、疲労と、極度の睡眠不足。
数日寝ていないと見られる。加えて、病気でただでさえ体力に乏しい身体。一度心停止に陥った身体。
その身体を離れようとしない間断なき恐怖。
レムリアはまいかちゃんを“お姫様だっこ”する。
微笑む彼女。その目の下の色濃い隈。
揺らぐ瞳。対して抗うように震えるまぶた。
首を横に振る。否定するように首を横に振り、その目から涙が溢れる。
ぎゅっと唇を噛む。
「もっと……どこか……」
振り絞るように声を出し、再び唇を噛む。
意図的に自分に刺激を与えている。
レムリアは気付いた。
今、彼女を捉えているのは強い眠気である。しかし、彼女は眠りたくない。
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(つづく)
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