【恋の小話】星の川辺で-2-
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あだちみな。そのぼーっとしてる彼女。
「あなた大山中の子でしょ?」
ワイシャツの襟に校章バッジ付けてるわけで、ハイもイイエも無し。
「そうですけど、あの、妹が幼稚園の七夕で短冊作るのに使う色紙(いろがみ)、の間違いです」
「あらがっかり。美奈ちゃんにタンカ友達が出来たのかと思ったのに」
おばちゃんは短冊をひっこめて“たのしいいろがみ”をカウンター後ろの文具コーナーから取ってきた。
タンカ。短冊を使うのであるから担架や石油輸送船ではあるまい。
「短歌……五七五七七の?ですか?」
「そう」
なら、合点が行った。
「いつも考えてるのはそれか」
にしても渋い趣味。
「あら、ずーっと考えてるのね。授業おろそかは良くないわ」
「でもテストの点が悪いとは聞かないっすよ」
「頭いい子だからね。でも授業態度として感心できないわおばさんは」
自動ドアが開き、センサーのチャイムが鳴ってふわりと翻る夏服のセーラー。
「え?高台(こうだい)君も詠むの?」
驚いたように、当の安達美奈が目を見開いた。視線の先はカウンター上の短冊。
……良く考えたら彼女がオレの名を呼んだのは初めてではないか。
そして、オレが彼女に声を掛けるのも。
「違うよ。妹が七夕の短冊つくるから色紙買いに来たんだけど、まさか本物の短冊が出てくると思わなかっただけ」
すると彼女は人目を気にするような素振りで周囲を見回しながらちょこまかした足取りで近づいてきた。
顔真っ赤。
「あの……短歌とか俳句やってること、クラスには秘密にしといてもらえませんか?」
そんなに恥ずかしいことだろうか。最も、言いふらすつもりも何もなかったが。
「ああ、いいけど」
お会計。
「難しい本読むんですね」
「興味持つとのめり込むのが男。で?これ?」
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(つづく)
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