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【恋の小話】星の川辺で-3-

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 短冊指さしたら、彼女はそれを買い求めた。
「ムリして取り寄せてもらってるんです」
「結構作るってことかな?消費してるわけでしょ?」
 言ったら、彼女は一瞬目を見開き、次いで笑った。
「消費……」
 別にボケかましたわけではないのだが、ツボにはまったらしい。
「確かに……失敗して捨てるの多いから……消費かも……」
 ツボにはまって抜けられない。吹っ切れたようにあははと笑う。
 ここでもし誰か入店したら唐突にセーラー服の娘が爆笑こいてるわけで。
「ごめんね、変な奴だと思ったでしょ」
 笑いすぎて零れた目尻の雫を彼女は指先でぬぐった。
「んにゃ、ただ笑ってるとこ初めて見たから。あ、おばさんありがと」
 ここで彼女が歩き出し店を出、一緒について行ったのは、バイバイと言われなかったので何の気無しの何となく、そのものなのだが、無理矢理説明を付けるとすれば、笑ったところ見たことが無いというギャップを埋める役どころが自分にあると無意識に思ったからかも知れない。
 向かったのはオレの家とは真逆の方向。彼女はうつむいて少し歩く。宮沢賢治の写真として後ろで手を組みうつむいている写真を良く見るが、それを思わせる。
「なんつーか、ついて行けないんだよね」
 彼女は唐突に顔を上げて言った。
「ん?は?オレ?」
 反射的にオレは言ったが、オレの方が後ろにいるのでそれはない。
 彼女は首を左右に振って。
「クラスにさ……変な子、なんだろうね。私って変?」
 立ち止まり、オレの方を向き、自ら顔を指さし、真ん丸の目で尋ねる。
「変」
 オレはひとこと言った。
「やっぱりそうか」
 傷付くと思いきや微笑んでひとこと。
 やっぱり変だ。
「でも……」
「でもいいんじゃね?近寄りたくないって意味の変じゃなくて面白えって意味の変だから」
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(つづく)

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