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【恋の小話】星の生まれる場所(7)

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 名刺をもらったので返す。社会人同士でペコペコバッタよろしく挨拶。ライブハウスと生産管理の名刺交換というのも……それはそれで面白いか。
「ああ、あそこの工場」
「ええ、工場の隅っこで動かしたり壊したり」
 その後二人が話してる間に配線片付け。それはそれで次やりたいバンドがいる。1回15分で交代とか彼女に聞いた。
 そばだてているわけでは無いが、会話は耳に入る。現在当該ライブハウスでは新人発掘イベントみたいなのを企画中。一般に新人や歌手のタマゴは、実績あるアーティストの前座やオープニングを通じてまず周知。対して新人ばかりを集めてというわけ。また、ライブハウスというのはある程度の動員が見込めないと場所を貸さない。達成出来ないと使用料を上乗せする場合が殆ど。でもこの企画ではその上乗せをチャラにする。
「君ならビジュアルも見込めるし、どうだろう」
 つまり顔立ちもカワイイと言うこと。
「あの……先生に相談させてもらってからでいいでしょうか?」
 彼女の問いに店長氏の目は僕へ。
 手をぶんぶん、僕先生ちゃうちゃう。
 彼女はレッスン先の先生氏の名を言った。
「ああ名前知ってますよ。駅裏で教室開いてる」
 店長氏は言い、幾らかのアーティストの名を挙げた。いずれもテレビやアニメソングで聞いた名前。その作曲やアレンジメントをしているそうな。
 ……実はすごくね?
「じゃぁ今週いっぱいエントリー受け付けてるから、お返事下さい」
「はい!」
 彼女は元気よく応じ、ハウスオーナー氏は手を上げて去った。彼女は上気した顔でその背中を見送ったが、一転、深刻な顔になった。
「どうしたの?」
 僕はキーボードとアンプを背負い、手に持ち、ケーブル類を首に巻いてという電設の戦士状態で尋ねた。
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(つづく)

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