【恋の小話】星の生まれる場所(10)
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てなことが読み取れるし予測できると言ったらスマホでメモメモ。
「何か質問はありますか?」
彼女は特に無い様子。でもそれで本当に大丈夫か?
「曲の事前審査は?5曲まるっとOKなのか、デモをお渡しして中から選ぶのか」
「ああ、それは当店の基本契約条項通りです」
つまり、イベントのスペシャル条件ペナルティ無しとは別の話。従って落選考慮で5曲以上作っておくこと必須。
彼女は一瞬悲しそうな顔をした。が、すぐにキュッと口元を結んで。
「判りました。頑張ります」
メモして僕を見。
「しばらく……ライブお休みします。曲作らなくちゃ。それで」
図書館付き合って欲しい。住民票を移してないので借りようにも借りられない。
「ああ、いいよ」
たい焼き屋の前を通って大通りを横断し、商業ビルの多い地区を過ぎ、橋を渡ると視界が開けて市民公園。
その一角に図書館はある。そこまで歩く間に、彼女の通う大学は商業科で、歌のレッスンは親には内緒で、まで聞いた。白いレースのカーディガンに薄いブルーのワンピース。公園の藤棚の下を歩く姿が様になる。
こちとら32歳のしがないサラリーマンだが傍目にはどう見えているだろう。
飛び回るクマバチさんちょっとどいて。
(クマバチさん。近づいて撮ってますが針自体は持ってますのでマネしないで下さい)
「住民票移さなかったのは失敗だねぇ。20歳になれば選挙権とか健康保険の払い込みとか国民の義務と権利が出てくるぜ」
あーおっさんくさい。説教臭い。
「自覚が足りない……かなって思います。親に隠れてクラブ行くみたいな、そんなノリかもって」
しょげた横顔。喜んだりこうやって不意に落ち込んだり、
感受性の鋭さと、恐らくは自分に自信が無いことによる不安定感。
「年寄り臭いよりいいんじゃね?最近の若いもんは言葉を知らねぇって愚痴ってるおっさんがここりありけり」
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(つづく)
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