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【恋の小話】星の川辺で-4-

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 彼女の発言と重なったがオレは構わず自分の声を押し通した。
「すとれんじ……」
「あぶのーまるじゃないってこと。ちょっとアレな人と言うよりちょっとレアな人」
「レアな人か!」
 満面の笑みで言うことかそれ。
「レアな人友達自体がレアアイテム」
 彼女は続け、それが五七五であることに気付く。
「字余り」
「ばれたか」
 学区境界の川に到着。堤防下、流れの脇まで遊歩道になっている。
 彼女は公園に到着した幼稚園児の唐突さで堤防をそこまで駆け下りた。
 飛行機の真似して両手広げてブーンというのを誰しも一度はやったと思うが、ほぼその状態に等しい。三つ編みでセーラー服が翻る。
「ここサンショウウオいるんだよね」
 で、振り返ってそう言う。確かにそうだが脈絡もなければ、そもそもオレが聞いてること前提の発言。普通そう話振られてそれなりの反応返せる人間おらん。
 とはいうものの、オレ自身は確かに彼女を追って堤防を降りているわけだが。
「特別天然記念物だよ。触っただけで文化財保護法違反だよ。そんなのがここにいるんだよ。不思議だよね」
 中学生の女の子のセリフじゃない。そもそも1メートルからの両生類。女の子はキャーキャー言って逃げそうなもんだが。
「見たことあるの?」
「ないよ。だから想像力が膨らむんだ」
「“赤毛のアン”みたいなやっちゃな」
「それ外れ。あたしアンみたいにお喋りじゃないし」
 男には充分マシンガントークだが。
「どこにいる動く天然記念物触らないから姿を見せてよ」
 三十一文字。
「それね、それこそこの雑誌のレポート見る限り、大雨で流されてきたんじゃないかって話。上流の元の生息地に返されてるよ」
「なんだつまんない」
 彼女はまず言い。
「でも良かった。ね」
 振り返って小首を傾げ、同意を求める。
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(つづく)

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