« 【恋の小話】星の生まれる場所(13) | トップページ | 【恋の小話】星の生まれる場所(14) »

【恋の小話】星の川辺で-6-

←前へ次へ→
.
「あたし綺麗?」
 それは親父に聞かされた“口裂け女”のセリフ。大マスクの女がこう話しかけてきて、マスクを取ると耳まで口が裂けている。
 さておき、ここでオレとしてはどう反応すればいい?
 回答に迷っていたら彼女の方が照れた。
「うわやだあたし何言ってんだろ」
 両の手のひら広げて(じゃんけんのパーにして)、両頬ぺしぺし叩きながら背を向け、足はその場でルームランナー使っているようにじたばた。
「女の子外見じゃねーべよ。最も内面に応じて外面ににじみ出ると思うけどね。まず外面取り繕う奴にロクなのいねぇ。って親父が言ってた」
 じたばたが止まった。
 その足もとに見つけた物。
「そのまま動かないで」
 彼女の足もと……クローバーの四つ葉がある。
 オレは引き抜こうとして、躊躇した。ここまで色々と彼女の行動予想外である。さればここで抜き取ってあげるよと言えば普通は喜ぶが。
「そーっと。四つ葉のクローバー」
「うそっ!」
 その時彼女が発した声は、爆発にも似た瞬発力と大きさを備え、流れを跨ぐコンクリートの橋の下で反響した。
 誰かが聞けば女の子の悲鳴と勘違いされるかも。オレは慌てて周囲を見、その心配が無いことを確認した。
 確認して見下ろすと彼女は……誇張じゃ無いぞ、カエルみたいな姿勢で手足折り曲げ、這い蹲って四つ葉をしげしげ。
「初めて見た!」
「まぁそういう人多いだろうね」
「高台君は?」
「ここに来るの夜だから意識したことはないよ」
「夜?」
 彼女はカエルの姿勢で首だけ持ち上げて訊いてきた。
「ああ、天体望遠鏡ひろげに」
 買ってきた雑誌の後ろの方、天文台の学長の連載記事。今月の星空見所と星座の逸話を見せる。
 彼女は少しの間目を走らせ。 
「赤道儀とかセットできるわけ?極軸合わせとか出来るわけ?追尾しちゃうわけ?」
「そりゃ、まぁ」
.
(つづく)

|

« 【恋の小話】星の生まれる場所(13) | トップページ | 【恋の小話】星の生まれる場所(14) »

小説」カテゴリの記事

小説・恋の小話」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【恋の小話】星の川辺で-6-:

« 【恋の小話】星の生まれる場所(13) | トップページ | 【恋の小話】星の生まれる場所(14) »