【恋の小話】星の川辺で-7-
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「すごい」
彼女が迸らせた言葉……そのまま書こうか。
「本当にそういう風にやるんだ。私マンガで見たんだけどさ北極星を使って付属の望遠鏡で合わせて星を追いかけさせるって。性能を示す数値は口径と境筒(きょうとう)長と接眼レンズがあって焦点距離を接眼レンズの口径で割ると倍率が出るんだってね。そういうこと頭に入れてやってんだへえ凄いなぁ凄いなぁ私も見てみたいダメかなぁ」
これを一気によどみなく喋った。あなたが可能な限りの早口で朗読に挑戦して欲しいと書きたい位。ちなみに色々間違ってるがまぁいい。
「今夜この二重星狙うから……」
「彼氏だったらなぁ」
「ひょ?」
それは、オレの口から思わず漏れ出た声というか音。
互いに見つめ合うオレ達。カエルのような姿勢の娘と、多分ひょっとこみたいな唇で見下ろしてるオレ。
「キャーちゅーはまだ早い」
彼女は言うと、正座の状態になって両の手で顔を覆った。
冗談でなくとんでもない娘なのだ。オレはこっそり頷いて彼女のセリフを反芻した。
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『なんつーか付いて行けないんだよね』
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「彼氏なぞ欲しいとも思っていなかったのに今目の前にその人のおり」
短歌……待て。
「告白か?それ」
しれっとそういうセリフが出てきたオレもどうかしてるが、その顔を覆った状態でコクコク頷く彼女もどうかしている。
告白、下駄箱に手紙とか、真っ赤な顔してチョコレートとか。
そんなことあったらいいな……男の子なら誰もが一度は夢想するもの。
比べてこう。シロツメクサにぺたんこ座っていないいないばぁ。
全然、マンガみたいな甘酸っぱさはないのだが、多分本当に照れ隠しなのだろうとオレは思った。
あぐらかいてどっこいしょ。
「えー、安達美奈さん」
「はい。フルネームで呼ばれるとドキドキします。高台智さん」
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(つづく)
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