【恋の小話】星の生まれる場所(14)
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“自分の経験や、将来の夢から、もわもわに近いキーワードを見つけるだけ見つけて、寝なはれ。寝ている間も脳は動く。その日の出来事から重要と思うものをまとめるんだってさ。もわもわの扱いもその仕事に任せとけばいいよ”
“わかった”
以後3日ほど。
彼女と出会うことも、会話も、SNSのメッセージも無かった。電話番号やメアドまでは知らないから、SNSに反応なければこちらからのアプローチはオシマイ。
終いにたい焼き屋に行って、店長氏に話を聞いたところが、1週間ほど実家に行くので休みを取ったという。何か急な用事でも出来たか。
ライブハウスのデモ音源提出締め切りまで2日。
快速急行を降りて改札を抜けると、ショルキー背負った娘がそこにいた。
雰囲気ガラリと変わっていた。そばかすだらけの眼鏡娘であった。
すっぴん、ということだろう。が、僕を見つめる目は変わりない。
「お帰り」
「出来ました。聞いて下さい。あなたに最初に聞いて欲しかった」
ピラミディオンは先客有り。
「実家帰ってたって?」
「はい。その、背伸びするよりも、今のままの自分の方がリアルだろうと思って。アルバム見たり、大好きだったところに行ったり、そしたら、化粧が嘘みたいに思えて。すっぴんごめんなさい」
「気にすんな。濃すぎる化粧は嫌いだ。おっさんだからかも知れんけどね」
実家の周囲を歩いて回って、忘れていたことを色々思い出したという。
合わせて、もやもやが、ひとつひとつ、形になってコードが付いていったと。
「親にも話しました。実は歌もやってるって。やっぱ諦めきれないからって」
秘密にしていたそうである。確かに一般に行く末の見えない、不安定な仕事を親は嫌う。仮に彼女が自分の娘だとしたら、やはり否定的な印象を持ったであろう。
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(つづく)
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