【恋の小話】星の生まれる場所(12)
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ノートパソコンを起動、ワープロ画面で筆談。キータッチは静かにコソコソ。
まず感想を聞いて質疑応答形式。解釈の仕方、言葉の意味、君なら同じ場面をどんな言葉で表現する?この歌に続きがあるとすれば?この恋人があなただとすれば何と返す?
以下はセリフ形だが口にしたわけではない。
“え、でもこれ男性の気持ちになって返せってことですか?”
“百合だったら?”
彼女は目をぱちくり。
古今東西老若男女与謝野晶子ファンの皆さんごめんなさい。
“何て読むの?”
そっちかい。
「ゆり、レズっ子」
声に出したら果たしてその場に居合わせた数名の視線集中。
が、彼女は気付いてない様子。どころか道を説く君頷いて。
“分かる気がする。憧れが恋に変わるような、相手が同性か異性かどうでも良くなっちゃうような。で、その気になってしまって後になってから『駄目だよこんなこと』やることやっといて何言うか”
おいおい。が、まぁ同じ言葉でも幾らでも意味は広がること知ってもらえれば良し。
与謝野晶子さんごめんなさい。
幾らか短歌を見た後、智恵子抄。
“短歌じゃないですよね”
“智恵子の言葉は智恵子が感じたままの言葉。シンプルの集合”
高村智恵子が心患っていた話は説明要るまい。本当の空の解釈は格好のテストネタ。
しかし。
“これ東京の空は公害で汚れてるというと書けばマルもらえるんだ”
“私もそうしました”
“でもねぇ、東北地方って寒いでしょ?だから雲が出来る位置が低いんだ。そこに気付いて智恵子が呟いたんだとしたら話が変わってくる”
“雲が近い”
“いいフレーズ出たじゃんか”
彼女は僕の顔を見た。
スマホを取り出しフリックフリック。
図書館で携帯ポチポチなんかいい印象ではないが、スリスリなら音は出ない。
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(つづく)
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