【恋の小話】星の川辺で-11-
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聞かなきゃ良かったかも知れない。オレの表情や言動にそうした同情が表れたらどうしよう。
俳句や短歌をぽんぽん作るような娘が、感受性鈍いわけが無い。
逆に一発で感付かれる。
「お前が、そばにいてあげたいと思うなら、それでいいんじゃ無いのかね」
母親は、言った。
電話を手に取る。
「むしろ立派な男の子だよ。連絡網どこだっけ」
渡した後の会話はスラスラと進んだ。先方が大仰な反応を示して声が漏れ聞こえる。
『お誘い下さると言うんですか?……ちがうちがう私の方からお願いしたの……ご無理では?』
オレはたまらず受話器を奪った。
「すいません智です。ムリとかそういうの全然関係ありません。望遠鏡持ってる話をしたら星を見たいと聞いたので。ただ、夜だからご心配かけちゃいけないと電話で確認させて頂いた次第です」
電話の向こうでお辞儀してるのが目に見えるよう。
向こうも美奈に変わった。
「てなわけで8時に。商談成立ってことで」
言ったら、彼女は大笑いした。商談という言い方がツボにはまったらしい。
『私買われるの?』
「オレの責任の下にお預かりするわけだからあながちウソじゃないでしょ。じゃ、後で」
電話を切る。と、シャツの裾を引っ張る力。
悠里。ニヤニヤしている。
「お兄ちゃん今の電話のお姉ちゃんとちゅっちゅするの?」
何と言うか、ムダにおませというか。
「違うよ。難しいお勉強を一緒にしようってお話」
「お星様見るんでしょ?」
いわゆる“カマ掛け”されたことにオレは呆れるやら驚くやら。
「悠里も一緒に行く~」
駄々をこねる方法子供によって様々だろうが、悠里の場合、ぴょんぴょん飛ぶ。
「えー兄ちゃん困る~」
一緒になって飛んでみせる。悠里はゲラゲラ笑いながら、
「お兄ちゃんは悠里と結婚するから誰にもあげないの!」
そういうことかい。
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(つづく)
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