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【恋の小話】星の川辺で-12-

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 であれば、悠里置いて行けば何が発生するか大体予想が付く。この家にある“オレのモノ”に片っ端からウンチの絵を描かれる。
 母親が抑えるだろうが……翌日翌々日まではムリだろう。女の恨みは根が深い。隙見て描かれる。
 仕方がねぇ。
「コブ付きデートとか聞いたことねぇよ……ご飯残さず食べること」
「はーい!」
 ピーマンもニンジンも苦にならないらしい。
 出かける時間になった。
 自転車に望遠鏡システムバラして載せる。赤道儀(三脚部分)は荷台にゴム紐。モータードライブは前カゴ。境筒(望遠鏡本体)はナップザックに突っ込んで背負った。
 で、サドルに悠里を乗せてガラガラ押して行く。
「わー!たか~い」
「しっかり掴まってないと落ちるぞ」
 で、アパートの駐輪場から出たら、そこにすでに安達美奈がいた。
 半袖ブラウスに……スカートはセーラーのまま。
「何か手伝うことないかなって。あらこんばんは」
 挨拶してもらって悠里が両手広げてVサイン。
「ごめん、付いてくるって」
「お姉ちゃん、にーちゃんとちゅーするの?」
「バカモノ。ちゃんと挨拶しろ。これ妹の悠里」
「悠里ちゃんでーす」
 で、ふざけてバンザイするからバランスを崩す。
 ハンドル持って手を出すのは不可能。咄嗟に身体を出したのでオレの胸元に顔面激突。
「……!……!」
 重心が完全にサドルから外れているので自力修復不可能。
「ごめん……ちょっと下ろしてやって欲しい。か、自転車抑えるか頼む」
 安達美奈に手伝ってもらわざるを得ない。
「いいよ」
 安達美奈はオレの傍らまで来、しゃがみ込んで悠里に腕を伸ばした。
「お姉ちゃんの方へおいで~」
 髪の毛から漂う香りふわり。
「うわぁお姉ちゃんいい匂い!お風呂入ったママみたい」
 悠里は顔を上げ、半べそ鼻水で笑顔キラキラ。
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(つづく)

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